偉人たちの横顔

世界を変える天才物理学者の遺産

アルバート・アインシュタイン 1879~1955

ノーベル物理学賞の賞金はそっくり先妻へ

敗戦国ドイツの学者が唱えた相対性理論を戦勝国イギリスの天体観測隊が証明した事件は、世界大戦で疲弊した欧州に希望を灯し人々を熱狂させました。アインシュタインには講演依頼が殺到し、その中に日本の雑誌社からの招待もありました。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の著書から日本に興味を持っていた彼はこれを快諾。そして1922年、日本に向かう船上で「光量子仮説による光電効果の発見」がノーベル物理学賞に決定したとの知らせを受け取ります。相対性理論が対象でなかったのは「理論が人類に大きな利益をもたらすかは疑問」という意見があったからです。
とはいえ日本国民は“できたてのノーベル賞学者”を熱烈に歓迎し、夫妻も講演旅行を堪能しました。ちなみに同行したエルザは二番目の夫人で、最初の妻ミレバとは1919年に離婚。その条件が「将来、ノーベル賞を受賞したら賞金を譲る」というもので、約束は現実となりました。

稀代のユーモリストにして筋金入りの平和主義者

彼が愛された要因に、飾らない人柄と当意即妙な受け答えがありました。記者から「相対性」について聞かれると「熱いストーブの上に1分間手を当てると1時間にも感じるが、可愛い女の子と1時間いる時は1分間にしか感じないでしょう。それが相対性」と答えたそうです。また、ボサボサ頭に口ひげ、靴下が嫌いで素足に靴という身なりに「もう少し服装に気を配ったらどうか」と助言されると「肉を買った時に包み紙の方が立派だったら侘びしくないか」と返したとか。
有名なアカンベーの写真は、しつこいカメラマンの「笑って」という注文に危うく笑顔を作りそうになり、思わず舌を出したものです。そのくせ写真を気に入り、新聞社に9枚も焼き増しを頼む茶目っ気を発揮。天才が垣間見せる子どものように自由な精神が人々を魅了したのです。
一方で、アインシュタインは幼少時代に見た軍事パレードに嫌悪を覚えて以来の平和主義者で、第一次大戦が始まると平和行動を促す『ヨーロッパ人への宣言』を著し、作家ロマン・ロランと平和運動への援助について話し合います。そして54歳(1933年)の時、ユダヤ人迫害を強めるヒトラーが政権についた直後に米国へ亡命し、プリンストン高等研究所の教授に就任。その後、第二次世界大戦が激化する中で、彼はマンハッタン計画には参加しませんでしたが、「E=mc2」が予言した核分裂の実用化は、多くの科学者によって驚異的な早さで進展し、広島・長崎の悲劇的なニュースがもたらされます。これを知った彼は驚愕とともに深く悲しみ、76歳で亡くなる直前まで原子力科学者の危機管理、核兵器の廃絶(ラッセル=アインシュタイン宣言など)や科学技術の平和利用を世界に訴え続けました。

その恩恵はハイテク機器から 宇宙の実像まで

アインシュタインの理論は様々な分野で応用されています。E=mc2の公式からは原子力発電や放射線診断・治療法が、光量子論からはレーザーや太陽電池、DVDやデジタルカメラ、センサーや光触媒が生まれました。特殊相対性理論は全地球測位システム(GPS)などに応用され、一般相対性理論はビッグバンやブラックホールの発見に寄与しています。
カーナビやスマホに不可欠のGPSは身近な好例です。GPSは人工衛星の電波を受信して「現在地」を特定しますが、電波を発信する時刻が正確でなければ役目を果たせません。衛星には高精度の原子時計が搭載されていますが、時速1万4,000kmの高速で、重力の小さい高度2万kmを飛行するため、「光速に近づくほど時間は遅くなる」(特殊相対性理論)と「重いものから遠くなるほど時間は早くなる」(一般相対性理論)という両方の影響を受け、1日0.00003秒ほど早く進み、そのままでは10kmもの位置の誤差が生じます。そのため衛星の時計は、理論に基づく誤差を自動補正して位置精度を高めています。(図1)

(図1)

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