
電気モーターと発電機の原型を発明
マイケル・ファラデー 1791年~1867年
製本屋の奉公人が独学で王立研究所の実験助手へ
ボルタ電池が発明される10年ほど前、ロンドンの貧しい鍛冶屋に男の子が生まれました。後に、紙幣に肖像が描かれるほどの功績を挙げるマイケル・ファラデーです。
彼は小学校も満足に通えず、10代前半から新聞配達兼製本職人として奉公します。その働きぶりを見た雇い主は、製本した書籍の自由な閲覧を許し、彼は7年間の奉公で膨大な知識を吸収していきます。
転機となったのは、著名な化学者ハンフリー・デービーの講演会でした。ファラデーは数回の講演を詳細に記録し、ノートをデービーに送って「化学の道を歩みたい」と打ち明け、チャンスが訪れるのを待ちました。そして、22歳になった1813年、王立研究所の化学実験助手としてデービーのもとで働くことになったのです。
1820年、エルステッドが電流の磁気作用を発見
それから7年後、デンマークのエルステッドは、ボルタ電池を使って電流の実験をしていた時、導線に電流が流れると、近くにあった方位磁石の針が振れることに気づきました。この現象を詳しく調べると、導線に電流を流すと、そのまわりに磁界発生することを発見し、“電流 の磁気作用”として発表しました。れがフランス科学アカデミーで紹介され、同国のアンペール(電流の単位アンペアは彼にちなむ)は自身で実験を開始。その年のうちに、電流が流れる方向に対して右ネジを回す方向に磁界が発生する「右ネジの法則」を発見し、電流とそのまわりにできる磁場との関係を「アンペールの法則」として数式化して、電気力学の基礎理論を発表しました。
電動機、発電機の発明で電磁誘導の世界を切り拓く
エルステッドやアンペールの成果を知った師匠のデービーは、電気と磁気から動力を得る装置の開発を試みるも失敗します。ところが助手のファラデーは独自に挑戦し、1821年に電磁回転装置の製作に成功したのです。それは電流で生じた磁場と磁石の磁場が反発することで針金と磁石がくるくる回るもので、世界で初めて電気の力を動力に変換する電動機(電気モーター)」の原型でした。しかし、ファラデーは、この成果をデービーに相談なく発表してしまい、激怒したデービーは彼を電気・磁気の研究から外します。
ファラデーが電磁気の研究を再開できたのは10年後でした。この間に電磁石が発明されるなど進歩が続く中で、彼が考えたのは「電気を流して磁気を発生できるなら、磁気で電気を発生できるのでは」ということです。それを実証しようと、1831年、鉄の輪にコイルを巻いて磁気を発生させることでコイルに電気が流れることを確認し、起電力の大きさと磁界の関係性を示す「電磁誘導の法則」を発見しました。ただ、この装置は瞬間的な電気しかつくれず、翌年、U字型磁石のN極とS極の間で円盤を回転させる装置をつくり、円盤に磁気の影響を継続的に加えることで電流を流すことに成功しました。これが世界で初めて継続的に電気を供給できる「発電機」の原型となりました。