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#134 特集 2026年08月12日更新

~恐竜の時代から 近未来まで~  探検・発見!生命をつなぐエネルギー【第1章】太古のエネルギー

 ロストワールドをめぐる エネルギー事情

大迫力の動くティラノサウルスロボットが来館者を迎える
大迫力の動くティラノサウルスロボットが来館者を迎える
恐竜博物館と恐竜学部勝山キャンパス
恐竜博物館と恐竜学部勝山キャンパス(中央奥)
Ⓒ福井県立恐竜博物館
福井県立大学恐竜学部 教授 福井県立恐竜博物館 研究員 河部 壮一郎 さん
福井県立大学恐竜学部 教授
福井県立恐竜博物館 研究員
河部 壮一郎 さん

今から約2億3,000万年前に誕生した恐竜は、気候や食物環境などの変化に適応しながら進化を続け、およそ1億6,000万年にわたって繁栄しました。

しかし、約6,600万年前に飛来した隕石の衝突によって短期間で絶滅し、恐竜時代はロストワールド(失われた世界)となりました。この間、恐竜たちはどのようなエネルギーを得て巨大化し、絶滅したのか 。

福井県勝山市にある『福井県立恐竜博物館』と隣接する『福井県立大学恐竜学部』勝山キャンパスを訪問し、
教授で福井県立恐竜博物館の研究員でもある河部壮一郎さんに教えていただきました。


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【コラム】『福井県立恐竜博物館』は 世界3大恐竜博物館のひとつ

福井県立恐竜博物館は、恐竜化石の一大産地である福井県勝山市に2000年7月に開館し、2023年7月にリニューアルしました。4,500㎡の広大な展示室は、「恐竜の世界」「地球の科学」「生命の歴史」の3ゾーンで構成され、51体の恐竜骨格や千数百の標本、大型復元ジオラマや映像など見どころ満載です。

化石クリーニングや肉食恐竜の頭骨復元、CTによる化石観察などができる「化石研究体験」や「野外恐竜博物館」での化石発掘体験などプログラムも充実しており、国内外から多数の人々が訪れ、2026年6月には累計来館者数が1,600万人を突破しました。

このように、展示の規模・発掘現場との結びつき・研究実績の高さから世界3大恐竜博物館のひとつと称されています。

ティラノサウルスの骨格標本

また、2025年4月には福井県立大学に日本初の恐竜研究に特化した『恐竜学部』が開設され、博物館に隣接する勝山キャンパス(2026年4月開校)では、豊富な恐竜化石を活用した教育・研究が行われています。

省エネ型で低酸素の大気にも強い小型恐竜
その特性が過酷な環境を生き抜くカギに?

初期の恐竜が出現した頃の超大陸パンゲアの想像図
初期の恐竜が出現した頃の超大陸パンゲアの想像図
(イラスト作成:シープレス編集部)
過酷な環境に適応する特性を備えていた原始恐竜エオラプトル
●全長 約1~1.5m
●体重 約5~15kg

過酷な環境に適応する特性を備えていた原始恐竜エオラプトル
(イラスト作成:シープレス編集部)

地球は約46億年前に誕生以来、大陸の集合・分裂や気候の大変動を繰り返し、そのたびに環境の変化に適応できなかった生物は絶滅しました。そして、新たな種が生まれては進化を重ねていきました。
恐竜は約2億3,000万年前(三畳紀の中頃:図1)に、爬虫類の一種として出現しました。

当時、陸上の王者として君臨したのは8mを超えるワニの先祖の巨大な爬虫類です。
生息環境は極めて厳しく、いくつもの大陸が合体した超大陸「パンゲア」が誕生する中で、活発な火山活動によるガスが酸素を消費し、大気は酸素濃度が約12%(現代は約21%)の低酸素状態でした。特に海から遠い大陸の内陸部は砂漠が広がり、夏は酷暑、冬は極寒という気候です。

◆恐竜時代の区分【図1】

恐竜時代の区分

その後、約2億年前(三畳紀の末期)になると、超大陸パンゲアの分裂に伴う激しい火山活動によって環境が激変し、大型の爬虫類や哺乳類、海洋生物などの約76%が絶滅しました。

このような中で、エオラプトルなど一部の小型恐竜は、したたかに生き残り世代を重ねていきました。それを可能にしたのは、
❶少ない酸素を効率的に取り込める呼吸器があること ❷体が小さいため消費エネルギーが少なくエサが少量で済むこと ❸二足歩行で俊敏かつ効率的に移動できること ❹世代交代が早く、個体数が減少しても回復が早いうえ、環境への適応力も高かったことなどが要因と考えられています。

温暖な気候で、栄養価の高い被子植物が出現
豊かになった食物環境により恐竜は巨大化?

超大陸パンゲアの分裂が進むにつれて海流が地球の熱エネルギーを循環させるようになり、地球は穏やかな気候に変化していきました。そして、大気中の二酸化炭素濃度が現在の約10倍レベルに上昇し、その温室効果によって植物が光合成を活発にして、シダ植物や裸子植物(マツ、ソテツ、イチョウなど)による緑豊かな楽園が形成されました。

これにより恐竜は無尽蔵の食物エネルギーを入手でき、その恩恵を最大限に活かして草食恐竜は巨大化していきました。
彼らは、軽量のうえ強靭な骨格で合理的に体重を支え、生きている限り成長し続けていたという説もあります。

温暖な気候の中でエサとなる植物が大繁殖し恐竜は巨大化していった
温暖な気候の中でエサとなる植物が大繁殖し恐竜は巨大化していった
(イラスト作成:シープレス編集部)
豊富なエサに恵まれ巨大化した草食恐竜の骨格標本
豊富なエサに恵まれ巨大化した草食恐竜の骨格標本

しかも、哺乳類のような体温を保つために大量のエネルギーを消費する純粋な恒温動物ではなく「中間的な代謝機能」を備え、食事で得たエネルギーを体温維持だけではなく、体の成長に多く使えたとも言われています。

中には全長25m、体重20t~30t以上の超大型の草食恐竜も現れました。ここまで大きくなると大型肉食恐竜でも容易に捕食できません。現代ならアフリカゾウとライオンのような関係でしょうか。巨大化は生存競争における有効な手段でした。

時代がジュラ紀から白亜紀になると、地上にはマメ科やラン科など栄養価の高い実がなる被子植物が出現して植物相はより豊かになり、ハチやチョウなどの昆虫が多様化し、恐竜も種を増やしていきます。
映画「ジュラシックパーク」でおなじみのティラノサウルスやトリケラトプスが登場するのもこの頃で、恐竜時代は黄金期を迎えます。

◆植物から得たエネルギーが恐竜繁栄の基盤に

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ジュラ紀の森復元ジオラマ
ジュラ紀の森復元ジオラマ
白亜紀の森復元ジオラマ
白亜紀の森復元ジオラマ

Ⓒ福井県立恐竜博物館

【コラム】福井県が「恐竜王国」といわれる理由

恐竜の化石は日本各地で発見されていますが、中でも福井県は「恐竜王国」といわれています。それには様々な理由があります。

福井県には恐竜が生きた時代の地層が地表近くに残り、特に勝山市北谷に広がる「手取層群」が有名です。ここで1982年に前期白亜紀のワニの全身骨格化石が発見されたのを機に大規模な発掘調査が行われ、国内初となる肉食恐竜のカギ爪をはじめ多種多様な恐竜化石が次々に採取されました。

福井県はこれらの恐竜資源を学術研究や地域振興に活用するため、「福井県立恐竜博物館」を開館。同時期、「フクイラプトル」、「フクイサウルス」などフクイの名が冠された新種の恐竜を発表し、国内外から注目を集めました。

福井県で発見された恐竜の展示コーナー
福井県で発見された恐竜の展示コーナー

その後も野外恐竜博物館の開館、恐竜化石と発掘現場の天然記念物指定と話題に事欠かず、30年以上続く発掘調査によって日本で発見された新種の恐竜化石13種のうち6種が福井県で発見されるなど「恐竜王国」の名にふさわしい実績を重ねています。

隕石の衝突、酸性雨、火山噴火、寒冷化などで食物連鎖が崩壊し、約7割の生物種が死滅?

隕石の衝突などで、食物連鎖が崩壊し、恐竜は絶滅への道をたどる
隕石の衝突などで、食物連鎖が崩壊し、恐竜は絶滅への道をたどる
(イラスト作成:シープレス編集部)

繁栄の終えんは突然やってきました。白亜紀末期の約6,600万年前、現在のメキシコのユカタン半島付近に直径約10kmの巨大な隕石が秒速約20kmの猛スピードで衝突したのです。

その衝撃はすさまじく、ユカタン半島付近に残るクレーターは直径約180㎞。衝突地点に近い北米大陸の沿岸にいた恐竜たちは衝撃波や熱波で即死したと考えられています。直後には大地震や場所によっては300mを超える巨大津波、大洪水も発生しました。

そのうえ飛び散った無数の隕石の破片は大気圏を突き抜け、再び地球に落下する時には火球となって地上を炎上させました。

しかも衝突した場所が硫黄を多く含む地質だったため、硫酸になりやすいガスが発生し、強酸性雨となって降り注ぎました。さらに隕石の衝突によって舞い上がった大量の塵が大気中を漂って太陽の光を遮り、気候を寒冷化させました。

これによって地上の植物も海中の植物プランクトンも光合成ができなくなって激減し、植物からエネルギーを摂取していた草食動物が死に、それを食べていた肉食動物もエサがなくなり死んでいきました。食物連鎖(食物エネルギーの連鎖)の崩壊です。

また、同じ頃に現在のインドのデカン高原で大規模な火山噴火が発生し、大量の火山ガスが環境悪化に追い打ちをかけました。こうして数百年程度のうちに地球上の約7割の生物種が死滅したと考えられ、およそ1億6,000万年にわたって繁栄した恐竜の時代は幕を閉じました。

大絶滅時代を生き延びた恐竜とは?

それは省エネ性に優れた地上の「鳥類」です。鳥類は後期ジュラ紀の約1億5,000万年前に、「羽毛恐竜」から分かれて誕生し、最古の鳥類としては「始祖鳥」が知られています。

鳥類には、体温を保つ羽毛、軽量で強靭な骨格、酸素を効率的に取り込む呼吸器系、活発な代謝機能など羽毛恐竜から受け継がれた多くの特徴があります。そして、ジュラ紀に誕生した鳥類の子孫たちは白亜紀の前期までに世界中に広がり、各大陸の環境に適応し多様化していきました。(図2)。

しかし、隕石の衝突による環境の激変は、他の恐竜と同様に多くの鳥類を死滅させました。特に樹上で暮らしていた種は、生きるための食物エネルギーの拠り所である森林の消失が決定的なダメージになったとする学説があります。

恐竜が鳥へ進化していく過程を示した復元模型
恐竜が鳥へ進化していく過程を示した復元模型
Ⓒ福井県立恐竜博物館

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一方で、地上で暮らしていた一部の小型鳥類は、細々と命をつなぐことができました。その理由として様々な説がありますが、❶小さな体のため少ないエサでも生命を維持するエネルギーを確保できること(省エネ型) ❷雑食性で地表や地下に残った植物の種子や昆虫、小動物の肉などから栄養を摂取できたこと ❸羽毛によって気温の変化に適応できたこと、などの理由が考えられます。ネズミほどの大きさの小さな哺乳類が生き残ったのも同様の理由でしょう。

◆勝山市で発掘された白亜紀の原始的な鳥類「フクイプテリクス」【図2】

フクイプテリクス

その後、数百万年かけて地球の環境が徐々に回復していく中で、鳥類は世代交代を繰り返しながら進化を続け、地表近くだけでなく大空にも生活圏を広げていきました。その子孫にあたる現代の鳥類は約1万種もいて、哺乳類の種がそのおよそ半数であることを考えると、恐竜類の繁栄はいまだに続いているのかもしれません。


さて、第一章では「太古のエネルギー」として、恐竜たちと地球環境・食物エネルギーの関係について見てきました。

第二章では、約700万年前に類人猿から分かれて出現し、いくつかの種に進化しながら約20万年前に誕生した現生人類(ホモ・サピエンス)がどのように道具や言語を駆使し、火や水、太陽や風などのエネルギーを使いこなして繁栄してきたのか「人類が築いた文明の時代」にスポットを当て、人類とエネルギーの関係を探ります!


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